自分を知るとは、「受け入れる」こと
中国での生活が始まってしばらく経った頃、僕はある種の“壁”にぶつかりました。 日本で得てきたスキルも常識も経験も、通用しない場面に何度も直面し、 「自分の武器って何だろう?」と自信を見失いかけていたのです。
そんな時に出会ったのが、数理暦学(干支暦)でした。 「宿命」と「資質」を読み解く、中国古来の知恵。
最初は正直、占いのように感じました。 しかし学びを深めるうちに、自分が曖昧にしてきた「本質」に光が当たる感覚があったのです。 郷に入れば郷に従え。 古代中国で培われたこの知識を学ぶことで、東洋人としての在り方が見つかるような気がしたのです。
私が生まれ持った日干は「壬水」。 大河のように流れ続け、人と関わり、周囲を潤す性質を持つ。 だが同時に、変化を求め、安定を嫌う一面もある。
それはまさに、これまでの僕の生き方そのものでした。
宿命を知ることは、「解放されること」
“宿命”という言葉には「決められた運命」という響きがあります。 しかし、数理暦学でいう宿命は、「持って生まれた設計図」にすぎません。
設計図を知らなければ、 現状の「ズレ」や「違和感」に理由を見いだせないまま、自己否定を繰り返してしまいます。 しかし、設計図を知れば「これでいいんだ」と静かに納得できるのです。
それは私にとって、大きな救いでした。 自分を変えるのではなく、整える。 無理に誰かになろうとせず、“自分らしいバランス”に軸を合わせること。 この感覚が持てたとき、初めて自分を肯定できるようになったのです。
“自己理解”は、他者理解の入り口になる
不思議なことに、自分の資質がわかってくると、 他人の見え方も変わってきました。
「なぜこの人はこんな言い方をするんだろう」 「なぜこの人は慎重すぎるのだろう」
以前は“合わない”と思っていた人にも、 「その人なりの設計図があるんだ」と思えるようになりました。
理解は、許しを生むます。 許しは、関係性をしなやかにします。
自己理解は、他者理解のスタートラインなのだと痛感しました。
Orbitcross構想の原点
中国で経験した組織運営の難しさ、文化の壁、そして自分自身の迷い。 そこから得た共通のキーワードは「人を理解することの難しさ」でした。
しかし、数理暦学(干支暦)を応用すれば、人の資質・タイミング・得意な場面が見えてくるのです。 それを組織や教育、人生の意思決定に活かせるのではないか。 しかし、この知識を得るためには永い年月にわたる勉強が必要です。 今すぐに、この知識を活用することはできないだろうか。
この発想から生まれたのが Orbitcross システムです。 =「個人の軌道(orbit)の交差(cross)から生まれるシナジー」 数理暦学の研究者により作られたこのシステム、 私はこの概念に共感し、中国で現地活用することで、実践知として発信することにしました。
自分を知ることは、“未来”を選ぶ力になる
自分の資質を知るということは、 未来を受け入れることではなく、未来を選び取る自由を取り戻すことです。
他人が敷いたレールを歩くのではなく、 「道を選ぶ」ことを、自分の意思で決められるようになります。 ときには周囲の期待や常識と逆らう選択になるかもしれません。 しかし、選んだ先に広がる景色は、 誰かに与えられたものではなく、自分だけの風景です。
この道は決して平坦ではありません。 自分を知れば知るほど、 受け入れたくない自分の弱さや影の部分にも出会います。 けれど、そこから目をそらさずに歩むからこそ、 疲れず、ぶれない。 なぜかというと、軸があるから。
東洋の古典『易経』に、 「知止而后有定(止まるべきを知って後に定まる)」とあります。 自分の限界や立ち位置を知ってこそ、 人は心を定め、進むべき時と止まるべき時を見極められるのです。
無理に誰かを演じる必要がないからこそ、 人との関係も自然で、深く、しなやかになる。 不思議なことに、自分の資質を理解し、 自分で選んだ未来に立つと、 周囲の人たちもまた、自分らしい軌道を歩み始めます。
自分を知ることは、未来を選ぶ力であると同時に、 周囲の未来を照らす灯火にもなるのです。
力蔵
転職を機に一人中国へ渡り、現地企業の事業運営のサポートや現地法人の経営、中国人スタッフのマネジメントに従事し、黒字化事業へ成長させる。実践を通じた東洋古典活用法の情報発信・勉強会を開催。