現地実践知(中国)

力蔵レポート⑥ 資質を知り、未来を選び取る力

自分を知るとは、「受け入れる」こと

中国での生活が始まってしばらく経った頃、僕はある種の“壁”にぶつかりました。 日本で得てきたスキルも常識も経験も、通用しない場面に何度も直面し、 「自分の武器って何だろう?」と自信を見失いかけていたのです。

そんな時に出会ったのが、数理暦学(干支暦)でした。 「宿命」と「資質」を読み解く、中国古来の知恵。

最初は正直、占いのように感じました。 しかし学びを深めるうちに、自分が曖昧にしてきた「本質」に光が当たる感覚があったのです。 郷に入れば郷に従え。 古代中国で培われたこの知識を学ぶことで、東洋人としての在り方が見つかるような気がしたのです。

私が生まれ持った日干は「壬水」。 大河のように流れ続け、人と関わり、周囲を潤す性質を持つ。 だが同時に、変化を求め、安定を嫌う一面もある。

それはまさに、これまでの僕の生き方そのものでした。


 宿命を知ることは、「解放されること」

“宿命”という言葉には「決められた運命」という響きがあります。 しかし、数理暦学でいう宿命は、「持って生まれた設計図」にすぎません。

設計図を知らなければ、 現状の「ズレ」や「違和感」に理由を見いだせないまま、自己否定を繰り返してしまいます。 しかし、設計図を知れば「これでいいんだ」と静かに納得できるのです。

それは私にとって、大きな救いでした。 自分を変えるのではなく、整える。 無理に誰かになろうとせず、“自分らしいバランス”に軸を合わせること。 この感覚が持てたとき、初めて自分を肯定できるようになったのです。


“自己理解”は、他者理解の入り口になる

不思議なことに、自分の資質がわかってくると、 他人の見え方も変わってきました。

「なぜこの人はこんな言い方をするんだろう」 「なぜこの人は慎重すぎるのだろう」

以前は“合わない”と思っていた人にも、 「その人なりの設計図があるんだ」と思えるようになりました。

理解は、許しを生むます。 許しは、関係性をしなやかにします。

自己理解は、他者理解のスタートラインなのだと痛感しました。


Orbitcross構想の原点

中国で経験した組織運営の難しさ、文化の壁、そして自分自身の迷い。 そこから得た共通のキーワードは「人を理解することの難しさ」でした。

しかし、数理暦学(干支暦)を応用すれば、人の資質・タイミング・得意な場面が見えてくるのです。 それを組織や教育、人生の意思決定に活かせるのではないか。 しかし、この知識を得るためには永い年月にわたる勉強が必要です。 今すぐに、この知識を活用することはできないだろうか。

この発想から生まれたのが Orbitcross システムです。 =「個人の軌道(orbit)の交差(cross)から生まれるシナジー」 数理暦学の研究者により作られたこのシステム、 私はこの概念に共感し、中国で現地活用することで、実践知として発信することにしました。


自分を知ることは、“未来”を選ぶ力になる

自分の資質を知るということは、 未来を受け入れることではなく、未来を選び取る自由を取り戻すことです。

他人が敷いたレールを歩くのではなく、 「道を選ぶ」ことを、自分の意思で決められるようになります。 ときには周囲の期待や常識と逆らう選択になるかもしれません。 しかし、選んだ先に広がる景色は、 誰かに与えられたものではなく、自分だけの風景です。

この道は決して平坦ではありません。 自分を知れば知るほど、 受け入れたくない自分の弱さや影の部分にも出会います。 けれど、そこから目をそらさずに歩むからこそ、 疲れず、ぶれない。 なぜかというと、軸があるから。

東洋の古典『易経』に、 「知止而后有定(止まるべきを知って後に定まる)」とあります。 自分の限界や立ち位置を知ってこそ、 人は心を定め、進むべき時と止まるべき時を見極められるのです。

無理に誰かを演じる必要がないからこそ、 人との関係も自然で、深く、しなやかになる。 不思議なことに、自分の資質を理解し、 自分で選んだ未来に立つと、 周囲の人たちもまた、自分らしい軌道を歩み始めます。

自分を知ることは、未来を選ぶ力であると同時に、 周囲の未来を照らす灯火にもなるのです。

力蔵

転職を機に一人中国へ渡り、現地企業の事業運営のサポートや現地法人の経営、中国人スタッフのマネジメントに従事し、黒字化事業へ成長させる。実践を通じた東洋古典活用法の情報発信・勉強会を開催。

https://note.com/riki_zoo

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